保育園歯科検診に行ってまいりました。

2023年05月05日

さる3月16日,30日は、保育園児童の歯科検診の日でした。

開業以来、嘱託歯科医として毎年行なっている検診です。

 

西宮市苦楽園にある、

アイリスプライベートスクール

https://www.iris-child.com/shukugawa.html

の運営する、

『夙川いぶき保育園』『ルミエール』『ミルティーユ』

の3園の児童(0歳〜6歳)を毎年3月に検診させて頂いております。

 

 

歯科健診では、主に以下の点に留意して検診を行っております。

 

①虫歯の有無

②歯肉炎の状態(歯垢の付着状態)

③顎関節

④歯並び、噛み合わせ

⑤口腔内、口腔外の異常所見の有無

 

まず虫歯があれば、これ以上進行しないように早めに歯科医院を受診して虫歯を治す必要があります。(早期発見,早期治療)

歯並びや噛み合わせの異常があれば、早期の矯正治療を行い、綺麗な歯並びに誘導する必要があります。(早期の咬合誘導)

健診の結果は『歯科検診結果のお知らせ』ということで園を通じて保護者様に通知し、早期の受診を促しております。

 

健診していつも感じることは、

虫歯が非常に少ない

ということです。

日々診療をしていても、私が大学を卒業した2001年ごろと現在を比べると、成人,児童共に虫歯が減少傾向にあるのではないかと感じます。

 

私の感じている感覚が実際どうなのか、公的なデータと照らし合わせて、疫学的な考察を行いたいと思います。

 

厚生労働省により6年に一度行われる、

歯科疾患実態調査

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/62-28-02.pdf

という調査があります。

全国の各地区から抽出された、満一歳以上の世帯員を対象とし、

歯や口の状態、歯を磨く頻度、歯や口の清掃状態、フッ化物応用の経験の有無、顎関節の異常、歯の状況、補綴(被せ物、詰め物)の状況、歯肉の状況、歯列、咬合の状況

などについて調査を行うものです。

この調査の結果によると、虫歯の発生割合は下図のように減少傾向にあります。

 

 

厚生労働省:歯科疾患実態調査より引用

2016年のデータで、全国平均で5歳時点でのう蝕の発生割合は39.0%ですが、2023年の現在であればもう少し下がって、30%くらいではないかと予想されます。(あくまで私見です。)

そして、毎年歯科健診に行っている、アイリスプラベートスクールの2017年(H29年)の4歳児の検診結果を示しますと、

19人中1人ですから、発症率は5.26%です。

先に述べた、虫歯の発症率の全国平均はH28年で39%であることを考えますと、(4歳児5歳児の違いがありますが)

西宮市(苦楽園地区)の虫歯発症率は全国平均の1/7と極めて低い事がわかります。

 

また、下図は全国の一人当たりの虫歯数です。

(上記の発症率の全国データが無かった為、発生本数のデータとしています。データが古い為正確な比較にはなりませんが、参考まで)

首都圏、東海地区、関西地区、広島県は全国平均よりも低い傾向にありますが、

西宮市は文教住宅都市宣言をしていることから口腔衛生意識も高く、保護者様の虫歯の予防意識も高いと考えられます。

従って、全国平均の7分の1(う蝕の発生率5%)という、素晴らしい結果が出ているものと考えられます。大変喜ばしいことと思います。

 

そして、そもそも、『どうすれば虫歯にならないか?』ということですが、

虫歯予防の基本的な考え方は、昔から以下の三つのことが考えられてきました。

①プラークの除去;歯磨きを行い、砂糖を歯の表面に残さない

②砂糖の摂取を控える(シュガーコントロール)

③フッ素を歯面に塗布する(フッ素の摂取状況)

 

以下に各論を述べます。

 

 

歯磨きを食後すぐに行うこと(歯垢;プラークを除去してミュータンス菌をお口の中から除去する)

約65年前、昭和の時代から言われている、3ー3ー3運動が1番の予防法と思います。すなわち、

『1日3回、食後3分以内、3分以上磨きましょう』という考えです。

食後30分程度、少し間を開けて歯磨きをした方が良い、という3305運動等の考えもありますがとにかく砂糖を歯の表面に付着した状態にしないことが重要です。

歯磨きの際に上記のような歯垢染色液を使えば、下記のようにどこが磨けていないかわかります。

 

特に虫歯の好発部位である、

①歯と歯の間

②歯と歯ぐきの境目

③奥歯の噛み合う面(裂溝;歯のみぞ)

に食べかす(プラーク)を残さないことが重要です。

 

また、仕事柄(例えば長距離運転のお仕事をしている方)歯を磨く時間がないという方は、キシリトールガムなどを食後にとり、ミュータンス菌の活動を抑えることが望ましいと考えられます。

詳しくは以下のホームページ等を参考にして下さい。https://www.lotte.co.jp/products/brand/xylitol/about/

 

 

砂糖の摂取を控える、お口の中を酸性にしない

人間やはり嗜好品というものも必要ですから「一生おやつを全く食べない!」わけにはいかないと思います。

ただし、虫歯予防のためには、

時間を決めて食べること

ダラダラ食いはしないこと

酸性度の強い飲料;特に炭酸飲料などを断続的に飲まないこと

が重要です。

以下は 食事(おやつ)の回数とお口の中のphの変化を表したグラフ(ステファンカーブ)です。

人間の唾液は、1日あたり1.5l分泌されており、お口の中を中性に保つ作用(緩衝作用)があります。

朝昼晩、規則正しい食生活をし、食後すぐ歯磨きする方のお口の中は、唾液の働きによって中性に保たれるため、エナメル質の臨界phである5.5を下回ることはなく、歯は脱灰されません。

逆に時間を決めずに不規則に間食したり、酸性度の高い飲み物、砂糖を多く含有する飲料を飲んだりしている方のお口の中は常に酸性に傾き、歯が脱灰され続け、ついには脱灰が起きます。(初期の虫歯の発生)

自分自身が1日の中で『砂糖』をいつ、どれくらいの間隔で摂取しているのか、一度考えてみるのも予防の一つと思います。

 

上記はよく販売されている飲料にどれくらいの砂糖が入っているかを示しています。

上記は歯が溶けやすい食べ物、飲み物です。

砂糖の量も気をつけなければいけませんが、それ以上に酸性の度合い(ph)についても考えましょう。

 

 

 

 

③フッ素を歯に塗布する

フッ素は歯に取り込まれて歯表面のハイドロキシアパタイト構造をフルオロアパタイト構造に変え、歯の質を強くする作用があります。

また、

歯自体を酸に対して強くすること以外にも、

酸によって溶けた歯を再石灰化する作用

虫歯菌が酸を作ることを抑制する作用

があります。

 

歯の一番外側は、エナメル質という組織で出来ています。

エナメル質はハイドロキシアパタイトという結晶構造の集合体ですが、ミュータンス菌の出す酸、や酸性度の強い飲物に溶けやすい性質があります。

 

以下はハイドロキシアパタイトの化学構造式です。

Ca10(PO4)OH2

フッ素イオン(Fー)が

ハイドロキシアパタイト;Ca10(PO4)OH2に取り込まれ、

フルオロアパタイト;Ca10(PO4)FxOH2-xに変化し、

耐酸性が向上します。

結果、ミュータンス菌の産生する酸に対して強くなり、歯が溶けることを抑制します。

最近はスーパーやドラッグストアなどで各メーカーから様々なフッ素入り歯磨剤が販売されています。

子どもさんだけでなく、大人の方も、フッ素入歯磨き粉を購入して、毎日使うと良いでしょう。

 

以上、昨今のう蝕の発生状況及び虫歯の予防法に関して、私の思うことを述べさせて頂きました。

こういった知識を患者の皆様に発信、啓蒙することで、微力ながらも地域の虫歯予防の一助となればと思います。

 

 

最後に、結語として、

 

健康で綺麗な歯並びはお子様への最高のプレゼントです

小児期の健康な歯と歯並びは、そのまま大人になっても維持されることが多いです。逆に小児期のう蝕、歯列不正を放置すれば、成人になっても歯科疾患で困る事が多いと考えられます。

事実、80歳で20本の歯が残っている方の中に、歯列不正(特に開咬、反対咬合)は極めて少ない、というデータがあります。

これは逆に考えれば、

「小児期の歯列不正のない健康な歯並びが,その後の歯の保存に大いに影響している」と言えると思います。

お子様も、また保護者様もぜひ一度お口の健康、歯の健康に関して考えて頂き、

虫歯予防の意識

早期発見、早期治療の意識

を持って頂ければ,と思います。

オンライン資格確認等システムを導入しました。

2023年03月27日

当院ではこの度2023年3月24日より、オンライン資格確認システムを

開始しました。

現在、政府主導で様々な分野でDX;デジタルトランスフォーメーションが推進されており、医療分野においても、

「保険証とマイナンバーカードの一体化」

「令和6年秋の保険証の廃止」

が推し進められています。

その一環として医療機関におけるマイナンバーカードによる資格の確認;「オンライン資格確認」が4月1日より原則義務化されます。

オンライン資格確認とは、

主に『マイナンバーカード』によって、オンラインで保険資格情報を確認できることをいいます。

今までは、保険証を患者様から預かり情報を入力していましたが、

「入力間違い」や「資格喪失後に受診してしまう」などの難点がありました。
また、高額療養費の場合は保険者に限度額適用認定証の発行を求めなくてはなりませんでした。

こういった背景から、導入されたのが「オンライン資格確認」です。

今後は受付に設置した顔認証付きカードリーダーに患者さん自身にマイナンバーカードを置いて頂くことで、最新の保険資格情報を自動で医院のシステムに登録することができます。

 

オンライン資格確認の受付での流れは、以下の通りです。

①患者さんに顔認証付きカードリーダーにマイナンバーカードを置いてもらう
②本人確認方法の選択
③カードリーダー搭載カメラによる自動顔認証or暗証番号入力orスタッフによる目視確認
④特定健診情報・薬剤情報の提供に同意するかを選択(患者さんの操作はここで終了)
⑤受付のPCに、患者氏名・住所・最新の有効な資格情報が自動で取り込まれる
⑥支払基金・国保中央会のオンライン資格確認等システムと常時接続しているため、患者が情報提供に同意した場合は、歯科医師等が特定健診情報・薬剤情報を閲覧できる

 

上記が、オンライン資格確認の流れ,概要です。

 

今後、初診料、再診料に加えて

医療情報・システム基盤整備体制充実加算

の名目で、患者の皆様には少額のご負担を頂戴することになりますが

 

⚫︎薬剤情報により、 重複投薬を適切 に避けられるほか、 投薬内容から患 者の病態を把握 できる。
⚫︎特定健診結果他の医療機関での投薬内容や、特定健診の情報を診療上の判断や薬剤の選択に活かすことが出来る。

などの利点があります。

これらの利点を活かして皆様により良い医療を提供していきたいと思いますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

 

 

新年明けましておめでとうございます

2023年01月04日

新年明けましておめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願いします。

 

旧年中に通院して頂きました患者様方には、

複雑な治療方針及び長期にわたる治療にも関わらず,治療にご協力頂き、感謝申し上げます。

今後も長い治療期間を提示することもありますが、

その場しのぎの治療ではなく、10年20年後のお口の健康を考え、さらには全身の健康にも寄与できる包括的な治療、最新最善の治療を行う

という方針で行っておりますので、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。

 

また、ご指導頂きました口腔外科、矯正歯科等の各専門医の先生、医科の先生方、歯科メーカー様、各種業者様、行政の皆様にも一方ならぬご高配を賜りましたこと、この場をお借りして重ねて御礼申し上げます。

 

 

さて、昨年はサッカーワールドカップが中東カタールで行われました。

各国の魂の入ったプレー、熱戦に毎度興奮いたしました。

日本も最後はクロアチアにPK戦で破れたものの、各選手の最後まで諦めない姿勢や監督の戦略には目を見張るものがあり、胸を打つ感動がありました。

特に監督が雑誌のインタビューの中で以下のように語っていた姿が印象的でした。

 

先日、ある日本人監督の方がこんなことを話していました。「日本代表監督になるのが目標だったけど、自分には無理だな」と。「あれだけ批判され、重圧が掛かって、一筋縄ではいかない選手たちを束ねたうえで、あの舞台で結果を引き寄せるなんて、自分にはできそうもない」と。

(中略)

でも批判も含めて、それだけサッカーに目を向けてもらえているということなので嬉しいですし、ファン層が広がればいいなと思っていて。もちろん、肯定的な意見を言ってもらいたいですけど(笑)、そこは見る人のサッカー観や価値観なので自由かなと。

ネット上には批判がたくさんあるかもしれませんが、それがすべてじゃない。肯定的な意見って、あまり出てこないですから。だから、まずは自分の周りのスタッフを信じ、日本サッカーのために一緒に戦ってくれる人たちの輪を信じていく。そこに目を向ければ、仲間がたくさんいるので批判は気になりませんでしたね。批判が気になる人は大変なんだろうな、と思いますけど、私はストレスを感じることなく仕事をさせてもらいました。代表監督は「クレイジージョブ」と言われますけど、私にとってはクレイジーではなく、幸せな仕事ですね。

職種も事業規模も、そこで回っている人数も経済も規模が違いますが、我々歯科医も真剣勝負、という点では同じかなと思います。

真剣に取り組み、複雑な治療(患者のためになる治療)に取り組めば取り組むほど、批判も出てくるのも自分としては覚悟をしております。

ではなぜそこまでして治療を行うのか?

それは、いささか大それた言い方になりますが、

『医療を通じて社会貢献するため』

『歯科治療の素晴らしさを一人でも多く知って欲しい』

『歯科治療を通じて仲間(歯科治療の理解者)が増え、皆さんがお口の健康のみならず、全身の健康にも目を向けるようになって欲しい』

からです。

上記の監督の対談の中で述べられている、

ストレスを感じず、幸せな仕事と思っています

という境地にはまだまだ到達できませんが、

自分自身の技量を高め、知見を広げるよう努力を継続し、

患者さんがご自身のお口の中、ご自身の健康に目を向けて、幸せを感じて頂きたい、

そう願います。

 

 

お正月は西宮神社にお参りしてきました。

この一年、皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます。

 

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年末年始の休診に関しまして

2022年12月26日

本年も残すところあと数日となりました。

来年もまた当院スタッフ一同、皆様に御満足いただける診療を行なっていく所存です。

なお、勝手ながら下記の日程で休診とさせて頂きます。

 

2022年12月29日(木)午後〜2023年1月4日(木)

 

何らかの症状ある方は、医院0798ー36ー4183まで(もしくはLINEにて)ご連絡頂ければ,携帯に繋がりますので、緊急時はご連絡下さい。

 

開業より5年が経ち、6年目を迎えました。

2022年11月13日

遅ればせながらのご報告になりますが、お陰様で当院は2022年8月21日をもって5周年を迎えました。

 

(諸事情がありホームページの更新が遅れ,申し訳ございません。)

 

縁あって、前任の先生より2017年の8月に現在の医院を継承させて頂き、

地域の皆様に歯科医療を通して貢献する』

『高次医療機関や専門医と連携し、より高度な医療を地域の皆様へ』

『最新の技術を提供する』

その一心で診療をおこなって参りましたが、この五年間で数多くの患者様にお越し頂きました。

この場をお借りして感謝申し上げます。

これもひとえに、これまで通院していただいた患者様はもちろんのこと歯科材料業者、歯科メーカー様、その他各社様、そして当院のスタッフの献身的なサポートあってのことと思います。

改めて厚く御礼申し上げる次第でございます。

 

 

 

さて、当院では去年から口腔内スキャナーを導入し、

『歯科医療のデジタルトランスフォーメーション』

『接触機会の減少による感染拡大の防止』

を目標に、院内のデジタル化に取り組んでまいりました。

 

さらに、今年の3月からは

歯科用CADCAMソフト、ミリングマシン、3Dプリンター等の新規技術の導入により、

技工物の内製化が可能となり、より短期間で被せ物をご提供出来る様になりました。

 

 

以下は当院内で作製した、ジルコニアセラミックスによるブリッジの治療例です。

 

 

①お口の中で取得したデータをCADCAMソフト上で設計、それをミリングマシンで削り出します。

このディスクはマルチレイヤードジルコニアと言い、工場から出荷された時点で、5層の色分けがされています。

透明性を維持しながら強度もある、先進的な材料と言えます。

②そのままでは機械的な色合い(ただ白いだけとなってしまう)になりますので、焼成する前にカラーリングします。

(陶器や瀬戸物を焼く前に釉薬を塗る理屈と同じです)

③ポーセレンファーネスと呼ばれる炉を使って、9時間かけてジルコニアを焼結します。

④焼結前と焼結後の比較です。

歯の根もとは色調が濃く、上方に行くほど透明感が出ています。

⑤お口の中に装着した状態です。色合いが自然で審美性があると言えます。

 

 

 

 

当院では上記のように可能な限り先進技術を導入し、患者様に提供していく所存です。

今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。

 

 

 

 

⚫︎下記は本年9月24日、25日に参加しました、日本口腔インプラント学会の様子です。

新型コロナウイルスによる行動制限もなくなり、講演もリアル開催、3年ぶりの企業展示ブースも行われ、様々な医療機器を直に見ることができました。

これからも最新の技術、学術情報の取得に努め、患者の皆様にご提供していきたいと思います。

  

お盆休みに関して

2022年08月19日

当院では8月23日(火)午後から8月26日(金)までの間、休診とさせて頂きます。

例年、休診中は転送電話にて承っておりますので症状等あられる方は、医院の電話番号0798ー36ー4183

までお電話ください。転送され携帯につながります。

何卒ご理解ご協力の程よろしくお願い致します。

 

 

当院での治療例④ 小児期における矯正治療(良い噛み合わせへの誘導);オーラルスキャナーを用いて

2022年08月07日

当院では一般治療の他に、小児期からの矯正治療も行なっております。

特に小学校低学年から中学年にかけ、ちょっとした歯列不正であっても、早期の歯列矯正(咬合の誘導)を行い、良い噛み合わせへ導くことが大切と考えます。

(高校生くらいになって歯列不正の治療に取り組もうという考えもありますが、顎の骨が柔らかく、顎関節部による成長が期待できる小学校低学年の時期に矯正を行うことはメリットが多いと考えます。)

 

具体的には

①前歯の反対咬合(下顎が出ている状態)

②臼歯部の異所萌出(歯が出てこない)

③下顎の後退症(相対的な上顎の前突)

④重度の叢生(歯並びがガタガタな状態)

などに関しては、矯正治療を強く推奨します。

(ご自身が気づいておられない時でも、こちらからご提案させて頂くことがあります。)

 

 

実際の症例をご紹介したいと思います。

下記の患者様は小学校低学年の児童で、右上の奥歯が本来の位置まで生えてきていない状態でした。

右上の第一大臼歯が斜めに生えているために手前の乳歯に当たり、本来の高さまで生えて来れない状態です。

将来的に,右側のみならず全体的に正しくない噛み合わせになり、顎の成長をも歪めてしまう可能性が大きいと考えられます。

矯正治療を進めるべく、上の顎の歯型をとり装置を作ることとしました。

通常であれば、ゴムのような材料を用いて歯型を取るのですが、

嘔吐反射が強いため、通常の型取りがどうしてもできない方でした。
そこで、オーラルスキャナーを用いて歯並びをスキャンすることにしました。

 

以下は,矯正用のバンドを第一大臼歯に装着した状態でスキャンした画像です。

 

上記のデータを3Dプリンターへ送信し、レジン製の模型を作製します。

そのレジン製模型を、通常通り型取りを行い、石膏で模型を作製したのち、矯正用のバンドを石膏模型に戻します。

矯正専門の技工所

オーソデント  https://www.orthodent.co.jp/

に送り,リンガルアーチ(延長型舌側弧線装置)を作製してもらいます。

リンガルアーチを上の歯にセットした状態です。

 

上記のように、オーラルスキャナーを用いることで、嘔吐反射の強い方に対しても、スムーズに装置を作製することができました。

 

さらに4ヶ月程度経過し、右上の第一大臼歯の傾斜が改善されました。

正しい方向に萌出していることが確認できましたので装置を撤去しました。(今後は別の装置を用いて前歯の歯並びを良い方向へ誘導していく予定です)

 

 

当院では、開業以来、小児期からの早期の咬合誘導、成人矯正に関して矯正専門医と協力して診療をおこなっております。

【矯正専門医】

  広島大学名誉教授・客員教授 丹根一夫先生

初診時から丹根先生と相談させて頂き、診査、診断の後、治療方針を決定します。矯正治療が開始されたあとも連携をとりながら治療を行なっております。

(実際の治療は主に私篠原が行いますが、必要に応じて丹根先生に直接治療して頂くこと可能です)

 

お子様の歯並びでお悩みの事ございましたら、お気軽に当院にお問い合わせ下さい。

インプラント研修会(大阪ジャシド)のお手伝いに行ってまいりました。

2022年08月07日

7月2日,3日は診療所を休診させて頂き、

(社)日本口腔インプラント学会JSOI認定JACID講習会

静岡県浜松市におけるインプラント外科に関する講義と実習

静岡県磐田市における施設長堀内克啓先生によるライブオペセミナー

のお手伝いに行ってまいりました。

夏の恒例行事と言いいますか、毎年実行委員として参加させてもらい,基本的なインプラント外科の考え方、日々進化する歯科医学の知見のインプットや技術の研修を行なっております。

 

7月2日(土)はインプラント外科に関する講義、及び実習(豚の上顎骨を用いて)を行いました。

 

7月3日(日)は、静岡県磐田市の牧野歯科医院内に移動し、実際の手術の見学を行いました。

手術の内容としては以下の3ケースが執り行われました。

 

①下顎オトガイ孔に近接した不良インプラントの撤去

→オトガイ部の神経走行部とその周囲の減張切開→GBR(骨造成)と同時のインプラント埋入
②前歯部における垂直水平GBR(骨造成)と同時のインプラント埋入

→臼歯部サイナスリフト(上顎洞底挙上術)も
③抜歯直後、口蓋側有茎弁形成→サイナスリフト歯槽部GBR同時埋入

 

 

と難症例ばかりでした。

 

講義と実習を通じて講師の先生が仰るのは

どのようなオペも成功は“外科の基本”の集積である

ということです。

また、毎年、講義後の懇親会を通じて全国のドクターとの交流,意見交換を行いますが、自分にとっては本当に有益な時間であり,自身の臨床技術の向上に役立っております。

今後も講義,実習を通じて知識と技術を再確認し、患者の皆様にアップデートした最新の知見,治療法をご提供したいと考えます。

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当院での治療例の紹介 ③歯牙の移植

2022年07月03日

当院では、歯を失った方に対する治療法として、

入れ歯やブリッジ、インプラント

という従来の方法以外に、親不知などのドナーとなる歯がある場合、その歯を他の部位に移植する、

『歯の移植』をまず第一選択として推奨しております。

 

歯の移植』は以前より保険診療として認められており、以下のようなメリット、デメリットがあります。

歯の移植/自家歯牙移植;trans-plantation of tooth =ご自分の歯を抜歯して、他の部分に移し替える手術

(利点として)

歯根膜(歯の周りのクッション)が残っているため、ご自身の歯で噛む感覚が残る。

移植した歯牙の周囲に骨などの正常な組織が誘導される。

→歯根が未完成の場合、歯髄が再生、歯根の伸長が見られることがある。

治療費が安価である=3割負担で7000円程度の負担

 

(欠点として)

麻酔や、外科的な処置が必要。

年齢、ドナーとなる歯の形態により長期予後が低くなる可能性がある。(おおむね30代くらいまでが適応と言われています)

将来的にう蝕、歯根破折、歯周炎になる可能性がある。

糖尿病等の全身疾患をお持ちの方、喫煙者の方には不向きである。

前歯から前歯、小臼歯から小臼歯への移植は、保険が効かない。

 

高血圧や糖尿病などの基礎疾患があったり、高齢の方には向かないというデータもありますが、移植が成功した場合は、歯根膜が残るため、自身の歯で噛む感覚があり、非常に自然な歯並びを作り出せます。

(当院では開業以来、約60名の方に施術し、概ね安定しております。)

 

 

 

以下に実例を示します。

治療例❷  ♯歯牙移植  を用いて歯の保存に努め、臼歯部の咬合支持を確保、その後の欠損の拡大の防止に寄与できたと考えられる一例

初診時(2017年10月)右下の一番後ろの奥歯は周囲の骨が炎症により吸収し、保存は不可能と判断しました。

2017年10月

右上の親知らずは右下と噛んでおらず、抜歯しても噛み合わせに差し支えはなく、かつ真っ直ぐ単純な根の形をしているため、移植に適していると判断しました。

上記のように、CT撮影を行い、移植予定の部位の大きさに対し、

移植する歯牙の大きさが適合するかシミュレーションを行ったのち、移植を行いました。

 

2019年1月(術後1年3ヶ月)

2020年9月(術後2年と11ヶ月)

2022年1月(術後4年と3ヶ月)

 

2022年1月現在、術後4年と3ヶ月程度経過していますが、歯ぐきの炎症や揺れなどは見られず、食事も普通に出来ている、とのことで、治療に対しご満足いただけているようです。

 

歯牙の移植は保険診療内での最良の治療と私は考えます。

移植にご興味ある方はどうぞお気軽にご相談下さい。

 

 

 

当院での治療例の紹介 ②マグネット義歯(磁性アタッチメント)

2022年03月06日

2021年9月より、磁性アタッチメント(マグネット義歯)の保険請求が認可されましたが、

それ以降、電話やメールでの問い合わせを多数頂いております。(関西地区以外からの問い合わせもあり、皆様の入れ歯治療への関心の高さを表していると実感しております)

 

当院の治療に関する基本的な方針としましては、『保険診療で行い得ることは全て行う。』ということです。

マグネット義歯に限らず、以下のものに関しても積極的に治療を行なっています。

 

⚫︎軟性裏装義歯

これはシリコン性の義歯デンチャーですが、義歯を作製してから6ヶ月経過していること、下顎の義歯のみ適応される、などの制限があります。下顎の骨が吸収してしまった方には、食事時の痛みの緩和に寄与する素材と考えます。

⚫︎歯牙の移植

親知らずを上下左右の大臼歯部に移し替えることで、噛み合わせの回復を行います。

当院では歯のない部位に対する治療方法として、入れ歯やブリッジの次の選択肢として『歯牙の移植』を強く推奨しております。自分の歯のですので、噛む感覚が残る、というメリットがあります。

⚫︎歯周組織再生治療剤 (リグロス®︎科研製薬)

これは2016年から保険収載された新しいお薬で、血管を新しく使ったり、骨や軟骨を誘導するシグナルを歯周組織内に起こす作用を持った、FGFー2(線維芽細胞増殖因子)を応用した薬剤です。

当院では3〜4年前より使用しておりますが、その効果は著しいもので、歯槽骨の再生が起こり、歯の揺れが止まり、歯周組織が健全になる、という効果があります。

歯周病で悩んでおられる方にとっては大きな福音となる、と確信しております。(詳細は後日、症例のご紹介、ということでご提示したいと思います)

⚫︎高強度硬質レジンブリッジ

小臼歯(5番目の歯)欠損に限られますが、金属を用いずに、審美的なブリッジが作製可能です。ただし、後方の歯が残っていることが前提条件としてあります。

⚫︎CT撮影、マイクロスコープを用いた根管治療(根管充填、歯根端切除)

基本的に保険診療、自費診療に関わらず全てマイクロスコープを用いて根管治療を行なっています。

ラバーダム、マイクロスコープを用いた根管治療は、現代の歯科医療においてはスタンダートな治療と私は考えております。

 

さて、マグネット義歯ですが、当院では積極的に患者の皆様に治療を提供しております。
その最大の利点は、

従来の止め金を用いず、磁石の引き合う力を利用して、入れ歯を保持できる

入れ歯によってご自身の歯が揺らされない(痛めない)

金属が見えず、見た目が良い

ということです。

 

 

 

 

 

以下は当院で実際に治療を行った患者様のケースです。

 

⚫︎「下の部分入れ歯を作るのに、マグネット義歯で作製してほしい」とのことで来院されました。

○型をとって、模型上でキーパーと言われる金属製の土台を作ります。

○下の両方の奥歯にマグネット義歯のキーパーをセットした状態です。

 

○入れ歯側にマグネットをセットした状態です。止め金が見えないので、患者様は大変満足されたご様子でした。

 

自身の歯に装着したキーパーと入れ歯側の磁性アタッチメントが磁力で引き合うため、外れずに安定しております。(強く引っ張ると簡単に外れますが、食事をしていて外れることはありません。)

 

 

 

以上のように、当院では

磁性アタッチメントを積極的に(日常的に)保険治療の1オプションとしてご提供しておりますので、

治療をご希望の方、質問などある方はどうぞご気軽にお問い合わせください。