当院では、歯を失った方に対する治療法として、
入れ歯やブリッジ、インプラント
という従来の方法以外に、親不知などのドナーとなる歯がある場合、その歯を他の部位に移植する、
『歯の移植』をまず第一選択として推奨しております。
『歯の移植』は以前より保険診療として認められており、以下のようなメリット、デメリットがあります。
歯の移植/自家歯牙移植;trans-plantation of tooth =ご自分の歯を抜歯して、他の部分に移し替える手術
(利点として)
歯根膜(歯の周りのクッション)が残っているため、ご自身の歯で噛む感覚が残る。
移植した歯牙の周囲に骨などの正常な組織が誘導される。
→歯根が未完成の場合、歯髄が再生、歯根の伸長が見られることがある。
治療費が安価である=3割負担で7000円程度の負担
(欠点として)
麻酔や、外科的な処置が必要。
年齢、ドナーとなる歯の形態により長期予後が低くなる可能性がある。(おおむね30代くらいまでが適応と言われています)
将来的にう蝕、歯根破折、歯周炎になる可能性がある。
糖尿病等の全身疾患をお持ちの方、喫煙者の方には不向きである。
前歯から前歯、小臼歯から小臼歯への移植は、保険が効かない。
高血圧や糖尿病などの基礎疾患があったり、高齢の方には向かないというデータもありますが、移植が成功した場合は、歯根膜が残るため、自身の歯で噛む感覚があり、非常に自然な歯並びを作り出せます。
(当院では開業以来、約60名の方に施術し、概ね安定しております。)
以下に実例を示します。
治療例❷ ♯歯牙移植 を用いて歯の保存に努め、臼歯部の咬合支持を確保、その後の欠損の拡大の防止に寄与できたと考えられる一例
初診時(2017年10月)右下の一番後ろの奥歯は周囲の骨が炎症により吸収し、保存は不可能と判断しました。
2017年10月
右上の親知らずは右下と噛んでおらず、抜歯しても噛み合わせに差し支えはなく、かつ真っ直ぐ単純な根の形をしているため、移植に適していると判断しました。
上記のように、CT撮影を行い、移植予定の部位の大きさに対し、
移植する歯牙の大きさが適合するかシミュレーションを行ったのち、移植を行いました。
2019年1月(術後1年3ヶ月)
2020年9月(術後2年と11ヶ月)
2022年1月(術後4年と3ヶ月)
2022年1月現在、術後4年と3ヶ月程度経過していますが、歯ぐきの炎症や揺れなどは見られず、食事も普通に出来ている、とのことで、治療に対しご満足いただけているようです。
歯牙の移植は保険診療内での最良の治療と私は考えます。
移植にご興味ある方はどうぞお気軽にご相談下さい。