当院での治療例の紹介 ③歯牙の移植

2022年7月3日 日曜日

当院では、歯を失った方に対する治療法として、

入れ歯やブリッジ、インプラント

という従来の方法以外に、親不知などのドナーとなる歯がある場合、その歯を他の部位に移植する、

『歯の移植』をまず第一選択として推奨しております。

 

歯の移植』は以前より保険診療として認められており、以下のようなメリット、デメリットがあります。

歯の移植/自家歯牙移植;trans-plantation of tooth =ご自分の歯を抜歯して、他の部分に移し替える手術

(利点として)

歯根膜(歯の周りのクッション)が残っているため、ご自身の歯で噛む感覚が残る。

移植した歯牙の周囲に骨などの正常な組織が誘導される。

→歯根が未完成の場合、歯髄が再生、歯根の伸長が見られることがある。

治療費が安価である=3割負担で7000円程度の負担

 

(欠点として)

麻酔や、外科的な処置が必要。

年齢、ドナーとなる歯の形態により長期予後が低くなる可能性がある。(おおむね30代くらいまでが適応と言われています)

将来的にう蝕、歯根破折、歯周炎になる可能性がある。

糖尿病等の全身疾患をお持ちの方、喫煙者の方には不向きである。

前歯から前歯、小臼歯から小臼歯への移植は、保険が効かない。

 

高血圧や糖尿病などの基礎疾患があったり、高齢の方には向かないというデータもありますが、移植が成功した場合は、歯根膜が残るため、自身の歯で噛む感覚があり、非常に自然な歯並びを作り出せます。

(当院では開業以来、約60名の方に施術し、概ね安定しております。)

 

 

 

以下に実例を示します。

治療例❷  ♯歯牙移植  を用いて歯の保存に努め、臼歯部の咬合支持を確保、その後の欠損の拡大の防止に寄与できたと考えられる一例

初診時(2017年10月)右下の一番後ろの奥歯は周囲の骨が炎症により吸収し、保存は不可能と判断しました。

2017年10月

右上の親知らずは右下と噛んでおらず、抜歯しても噛み合わせに差し支えはなく、かつ真っ直ぐ単純な根の形をしているため、移植に適していると判断しました。

上記のように、CT撮影を行い、移植予定の部位の大きさに対し、

移植する歯牙の大きさが適合するかシミュレーションを行ったのち、移植を行いました。

 

2019年1月(術後1年3ヶ月)

2020年9月(術後2年と11ヶ月)

2022年1月(術後4年と3ヶ月)

 

2022年1月現在、術後4年と3ヶ月程度経過していますが、歯ぐきの炎症や揺れなどは見られず、食事も普通に出来ている、とのことで、治療に対しご満足いただけているようです。

 

歯牙の移植は保険診療内での最良の治療と私は考えます。

移植にご興味ある方はどうぞお気軽にご相談下さい。