少し前のことになりますが、
8月10日、11日は診療を休診させて頂き、
日本口腔インプラント学会臨床系研修施設 JACIDが主催する講義および手術見学に実行委員として参加して参りました。
JACID(the Japan Association of Clinical Implant Dentistry)は、インプラントの臨床技術の向上、知識の取得を目的とした研修施設であり、インプラント学に関する講義を、大学教授や臨床家の先生方より、それぞれの専門的立場から、教育、指導して頂ける研修の場です。
8月10日は
大阪大学歯学部臨床教授 堀内克啓先生による
インプラント外科の基本的主手技と失敗しないGBR
失敗しないためのサイナスリフトのポイント
と題された講義および実習が静岡県浜松市内で行われました。
GBR法とサイナスリフト(上顎洞底挙上手術のうちの1つ)はいずれもインプラント手術と並行して(あるいは先立って)行われる、歯槽骨の幅を増やす手術です。
以下にそれぞれの概要を示します。
GBR法とは、Guided Bone Regeneration法 =骨造成術と呼ばれる口腔内の外科手術であり、
もともとは歯周病治療の一環と行われていたGTR法という手術法があったのですが、それから派生して骨の再建に用いられる術式へ発展した、いう経緯があります。
事故や歯周病などにより歯および歯槽骨を失った(吸収してしまった)ため、そのままではインプラント手術が行えない場合に行われる外科的な処置です。
患者さん自身の骨や、骨補填材を患部に移植し、生体に親和する膜(各種メンブレン)を用いて骨材を保護、歯ぐきを縫合して数ヶ月間治癒を待つ。その結果、歯槽骨のボリュームが増える、というものです。
その結果、従来では無理とされてきた、骨の吸収した部位に対してインプラント手術が可能となり、清掃のしやすい、永続性の期待できるインプラント修復が可能になります。
上顎洞底挙上手術には2つの術式があり、概ね以下の様な基準があります。
●上顎骨の幅が概ね5mm以上であればクレスタルアプローチ=crestal approach
●上顎骨の幅が概ね5mm未満であればラテラルアプローチ=lateral approach
クレスタルアプローチはソケットリフトとも呼ばれ、インプラント手術の時に骨に形成したホールに対してオステオトームという外科器具を用いて上顎洞底粘膜を持ち上げ、できたスペースに骨補填材およびインプラントを埋入する、というテクニックです。
一方、ラテラルアプローチは、サイナスリフトとも呼ばれ上顎骨の厚みがさらに薄い場合に用いられる手法です。上顎洞と呼ばれる副鼻腔に対して、側方からアプローチし、外科的な手術によって粘膜を挙上し、インプラント埋入に必要な骨の幅を作り出す手術です。
午前中は上記2つの術式に関する基礎的な知識、適応症、手術のガイドライン、注意点などを講師の先生より講義して頂き、午後からは豚の顎骨を用いてそれぞれの術式に対するトレーニングを行いました
実際の手術の手技、術中の注意点などをわかりやすく教えて頂きました。
翌日、8月11日は、磐田市内のJACIDの関連施設にてインプラントの手術が行われている様子を、見学しディスカッションする、というものでした。
午前午後で一件ずつ手術が行われました。
具体的には
●交通事故により前歯が歯槽骨とともに喪失した症例
●下顎にインプラントが既に入っているが、既存の歯も含めて保存が難しく、抜歯してその場で全てインプラント支持のブリッジ(ボーンアンカードブリッジ)で即時修復する症例
でした。
インプラント治療の中でも最も高度な手術を間近で見学でき、見識が広がりました。それと同時に、広範囲かつ高度な処置においても、基本手技、基礎的な技術の積み重ねが大切、であると感じました。
これらの知識、知見を生かしこれからの日々の診療に生かしていきたいと考えました。