自家歯牙移植(transplantation of tooth)に関して (ブリッジ、インプラントを選択する前に考えること)

2019年5月2日 木曜日

日本の保険診療の項目の中に、

自家歯牙移植  ;    transplantation  of  tooth

という治療の選択肢があることを、皆さまご存知でしょうか?

日々患者の皆様とお話をしていますと、おおよそ9割以上の方がご存知ないことに気づきます。

ご自身の歯が虫歯や歯周病で無くなってしまった時の治療の選択肢としては

 

⚫︎保険診療では

①ブリッジ(いわゆるさし歯、かぶせ物、前後の歯を大きく削る)

②部分入れ歯(取り外し式のもの、前後の歯に金具がかかる)

③そのまま経過観察(最後方の歯が失われた場合、食事に支障がなければそのまま経過を見ることもできます)

⚫︎自由診療では

インプラント(他の歯を削らない、負担をかけないという点では最良の治療法。ただしご自分の骨があり、全身疾患などがない場合に限る)

 

が一般的に考えられるかと思います。

自家歯牙移植は、数年前までは「下顎の親知らずを下顎の第一大臼歯に移植した場合に限る」などの規制があったのですが、

少し前の保険のルール改定から

上顎の親知らず(智歯)を下に植え替える

事も認められる事となりました。

 

これにより適応症は格段に広がりましたし、患者の皆様にとって非常に有益な治療法となる、と私は考えます。

 

ただし、自家歯牙移植を行うにあたって、

 

年齢が概ね39歳以下であること(それ以上の方でも可能ですが成功率は年々下がるという報告があります)

糖尿病、代謝性疾患、免疫機能疾患などの全身疾患がないこと

喫煙者でないこと

「外科的処置を伴うこと」「治療期間が3ヶ月程度はかかること」等、治療方法、治療期間に対してご理解頂けること

などの諸条件がありますが、

 

周りの歯に負担をかけない

歯根膜という感覚受容器が残る(自分の歯で噛む感覚が残る、機能的である)

自身の組織、細胞を用いる為拒絶反応がない(生物学的優位性)

他の治療法と比較して、廉価である(約10000円程度の自己負担、保険3割で計算した場合)

 

などのメリットがあります。

 

また、

早期の脱落(骨の状態が良くなかった場合には炎症を起こしてくっつかないことがあります)

歯根の吸収、アンキローシス(歯根膜がなくなり骨と歯根がくっついてしまう状態)

などの失敗例も報告されていますが、成功した場合のメリットは非常に大きいものと考えます。

 

当院では、自家歯牙移植を治療の選択肢として推奨しておりますので、ご興味のあられる方はお気軽にお問い合わせ下さい。