医院ブログ

歯の移植術 保険診療で行える持続可能な治療法

これまで、虫歯や歯周病,不十分な根管治療や外傷などにより,歯を失ってしまった場合の治療法としては,

ブリッジ
部分入れ歯
インプラント

といった治療法が選択されてきました。


それぞれメリットデメリットがあり、保険診療、自費診療の違いはありますが、歯科医院において日常的に行われている治療です。



もう一つの選択肢として、

ご自身の歯(親知らず等)を利用して歯の無いところに移し替える、
「自家歯牙移植」


という方法をご存知でしょうか?



歯周病や大きな虫歯で歯を失ってしまった場合、抜いた部位には骨の欠損が生じますが、自身のお口の中で機能していない(噛み合っていない)親知らずがあれば、それを抜歯して欠損部位に移植することができます。

これは保険診療で昔から行われている、医学的に確証の得られた治療法であり、健康保険内で7000円程度で行うことが可能です。

(ただし、全身疾患があったり、親知らずの状態が良くない場合、高齢の場合など治療が難しい場合もあります。また親知らず以外の歯を移植する場合は自費診療での治療となります。)





当院では2017年の開業以来、多くの方にこの『歯の移植』を行ってまいりました。

以下に、
『自身の歯を移植することで、欠損を補い、周囲の歯槽骨の再生も出来たケース』
を提示します。
(患者の皆様が治療法を選択する一助となれば幸いです。)

⚫︎初診時(2018年1月)レントゲンです。
左上の第一大臼歯は過去の根管治療、特に太い金属性の芯が入っていることで炎症(破折)を起こし、歯を残すことが難しい状態です。



⚫︎抜歯後の状態です。
 左上の第一大臼歯の欠損に対し、

①部分入れ歯
②ブリッジ(前後の歯を削るというデメリットがある)
③インプラント(骨がないために事前に骨を増やす処置などが必要)
④歯牙の移植(右下の親知らずが余っているのでこれを上に移し替える)
⑤何もせず経過観察(前後の歯が傾斜してくるため、余り推奨出来ない)

それぞれのメリットとデメリットを説明し、費用的なこともお伝えして検討の結果、「歯の移植」を行うこととなりました。




⚫︎抜歯後のCT画像です。


抜歯後に撮影したCT画像に置いて、右下の歯牙の長さ直径などの数字を入力し、インプラントを植える際のシミュレーションソフトで治療計画を立てます。
骨の高さが足りないため、一部上顎洞を挙上し、そのスペースを利用して歯を植立することとしました。
(頬側の骨はない状態ですが、移植する歯牙表面の歯根膜に存在する幹細胞により骨の誘導を促します。)


⚫︎歯の移植中の写真です。その①



先に左上の大臼歯部(受容側 レシピエントサイト)の歯肉を剥離し、歯が埋まりやすいように特殊なドリルを用いて骨の形をお椀状に作ります。
右の写真では上顎洞粘膜が奥の方に見えており、これを挙上しながら歯牙を植立していきます。


⚫︎歯の移植中の写真です。その②


右下の親知らずを抜歯し、左上に植立したところです。
このあと縫合により歯を固定します。


⚫︎移植後のCT画像です。

移植後のCT画像では、歯が所定の位置に植立されたことが確認できます。
歯の先端数ミリは上顎洞の中に入っておりますが、歯根膜に含まれる幹細胞の再生誘導能により、骨組織が歯牙周囲に今後出来る予定です。



⚫︎移植して2週間後です。

歯茎が治癒に向かっています。骨組織はまだ認められません。



⚫︎移植して3年4ヶ月経過した時のお口の中の状態です。



歯牙周囲の歯茎は完全に治癒し、ご自身の歯を移植しているため、噛む感覚があります。


⚫︎同時期のレントゲン写真です。


歯の周囲(特に上顎洞方向)に新しく骨が出来ていることがわかります。

歯の移植のみならず、新しく骨が作られ、強固な歯の植立が達成できました。
患者様も何の違和感もなく噛める、とのことで満足されています。


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上記のように、歯の移植は保険診療で行える、廉価で持続可能な治療と思います。

ただ高齢の方、喫煙者の方、全身疾患のある方では歯が植立せずに早期に脱落することもあります。

そして親知らずのない方はもちろんですが、歯の移植を行えたいため、ブリッジやインプラント治療を選択していただくことになります。

そして10年単位で考えますと、歯根が骨と置き換わりながら吸収(置換性吸収)したり、脱落したりということも考えられますが、保険診療で行える、持続可能な(廉価な)治療方法として、当院では欠損部の治療としては第一選択として提唱しております。

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