11月2日(土)の午後と3日(日)はお休みを頂戴し、
第54回公益社団法人 日本口腔インプラント学会学術大会
に参加して参りました。
会場は、京都市左京区の国立京都国際会館でした。
本大会は、日本口腔インプラント学会が年に一回開催する年次大会であり、インプラント治療に携わる歯科医師,歯科衛生士,歯科技工士,スタッフ数千人が参加する大規模な学会です。
「国民から信頼される口腔インプラント治療〜人生100年時代を見据えた口腔機能の維持回復〜」
をメインテーマとし、3日間にわたり開催されました。
本大会では、各会場に分かれさまざまなテーマに沿ってシンポジウムが開催されました。
「最新のデジタル技術(オーラルスキャナー)のインプラント治療への応用」
「3Dナビゲーションシステム」
「抜歯と同時に行われるインプラント治療(抜歯即時埋入)の最新の考え方」
「インプラント治療における口腔機能の維持回復」
「インプラント治療のための解剖学」
「メディカルスタッフが知っておきたい禁煙支援と加熱式タバコや電子タバコの有害性」
上記のように、多種多様な分野の研究が発表され、改めてインプラント治療の奥深さ、学術研究の大切さを実感しました。
また、企業の展示ブースも多数出展されており、多くの情報を得ることができました。
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その中でも、
「インプラント治療における口腔機能の維持回復」をテーマに行われたシンポジウムが私としては印象に残りました。このシンポジウムの内容及び、聴講して考えたことを、ご説明したいと思います。
上記は『インプラント治療における口腔機能の維持回復』のシンポジウムの中でのスライドです。
2023年に政府から発表された、『経済財政運営と改革の基本方針』中で
『健康寿命の延伸』
『エビデンスに基づく保健事業の推進』
『オーラルフレイル(虚弱)対策』
『歯科領域におけるICTの活用』
などについて触れられていますが、
「全身の健康維持のための口腔管理の必要性」「生涯を通じた国民皆歯科検診」
が明記されています。
以前より、歯周病と全身疾患(心疾患や糖尿病など)の関連性などは論文でも示されてきましたが、
よりはっきりと、「お口の健康が全身の健康にいかに寄与するか」が示された形です。
このシンポジウムの中で
「健康長寿についての学際的研究」という発表がありましたが、
お口と全身の健康の関連性に関して、様々な調査がなされていました。
例えば以下のように、
動脈硬化と咬合支持との関連性が調査され、奥歯で両側ともしっかり噛める方と、
奥歯を失って咀嚼が上手く出来ない方とでは、1.87倍の発症リスクがあるというデータや、
奥歯の噛み合わせと歩行速度に関する調査ですが、
奥歯が残っている方とそうでない方とでは、80歳になった時の歩行の速度に差がでるというデータ
が示されていました。
インプラント治療は、
両隣りの歯を削らず、ご自身の歯と同じように噛む事ができ、
残りの歯に負担をかけず、お口全体の噛み合わせを保つという(構造的な)利点があります。
ただそれ以上に、全身の健康に与える好影響が大きいということが近年研究で示されています。
今回のシンポジウムの中でも出てきたように、
インプラントを用いて両方の奥歯で噛める状態を維持することは、
『心筋梗塞や歩行速度への好い影響を及ぼす』のみならず、
『咀嚼能力の回復による栄養摂取の向上、認知症予防などにも寄与する』ことができると言えます。
ただ単に歯がないところをインプラントで補う,抜けたからインプラントを入れる、のではなく
インプラント治療を通じて
両方の奥歯でしっかりと噛める状態にする、
これ以上の歯の欠損を防ぎ、きちんと咀嚼できるお口の状態にする,
そして人生100年時代といわれますが、
患者様の残りの人生にプラスとなる治療(健康寿命を伸ばす治療)を行なっていきたい,
そう考えました。
他にも素晴らしい講演、最新の技術,知見等ありましたが、この稿では割愛しますが、
新しく得た知識,技術を自身の治療に活かせるように、患者様の利益に繋がるように、
今後も日々の臨床に真面目に取り組んでいこうと思います。